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ソクラテスの悪妻 小波盛佳
家庭円満だけを考えていればいいのでしょうか。他にもエネルギーを注ぐべきものがあるかもしれません。
2003年09月01日
2006年04月22日改
2013年10月29日改
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夫婦円満の秘訣
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ソクラテスの悪妻の話は有名です。
「なにはともあれ,結婚しなさい。良妻を得れば幸福になる。
悪妻を得ればあなたは哲学者になれる。」というものです。(※注1:原文あり)
これには,恐妻家だったらしいソクラテスのジョークが利いています。
「悪妻」という訳語にはあやしいひびきがありますが,それはさておき、
哲学者として研究に励んでいるソクラテスに対して,
良妻となって凡夫にしてしまうか,悪妻となって夫を成功に導くかということで,おもしろい内容を含んでいます。
少し考えてみましょう。
円満であるに越したことはないが,それにはかなりのエネルギーが必要です。
円満を求める気持ちの度が過ぎて、パートナーや家族と一緒に過ごすことなどにあまりに気を使い,
相手と自分の仕事や趣味で大きな犠牲を払うことがないとも限りません。
人が仕事などにここ一番の力を入れなければならないとき,無口になり,家族が目に入らないぐらいに熱中することもあるでしょう。
そんなとき,男性がその何かに対するエネルギーを保ち続けて,円満に対するエネルギーがいくらか損なわれたとしても,
仕方がないことかもしれません。
しかし、円満に対する配慮が欠けたことで,結果として関係が破綻したのでは、元も子もありません。
それは、互いの信頼関係が築けていなかったことにそもそもの原因があります。
そのような時に、パートナーが悪妻と呼ばれるのは気の毒というものです。
ソクラテス夫妻のように、理想に燃えるエネルギーを持った研究者としての生き方と、
いくらか不満を持ちながらもそれを容認して家庭を切り盛りする妻という関係も存在します。
ソクラテスのいわゆるマイホーム的ではなかったであろう生き方もひとつの人生です。
みかけの仲よさそうな円満だけがすべてではない、そんな行き方も参考にしてよいと思います。
しかし、その場合は、その夫婦、家庭の信頼関係の保ち方がベースになっています。
お互いを尊重し、家庭を維持していく努力を払わなければ、破たんするでしょう。
その形だけを真似るのは危険というものです。
ソクラテスのような大哲学者も、妻クサンチッペには頭が上がらなかったと言われていますが、彼の名誉のための弁明を代弁します。
彼女は悪妻の代名詞にさえなっていますが、実は気性が激しいだけで、ソクラテスに対しての尊敬の念と信頼感は十分に持っていたとも言われています。
理想に燃えて稼ぎの少ない亭主に対してついこぼすようなことはあっても、しっかり支えていたのでしょう。
妻に対する悪評に苦笑しながら、照れる気持ちから「実は僕にとっては、大事ないいかみさんなんだよ」という言葉を押し隠した雰囲気が、この名言から感じられます。
(※注1:原文) By all means marry. If you get a good wife, you will become happy; and if you get a bad one, you will become a philosopher.
--Socrates (469?-399B.C.)
(※注2)「ソクラテスの弁明」は、ソクラテスがアテナイの民衆裁判にかけられてから死刑を執行されるまでの、自身の言葉とされる弁明をプラトンが著わしたもの。
(小波盛佳 Moriyoshi Konami)
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