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離婚の危機 小波盛佳
横暴・身勝手な男性が長い間夫の地位を保ってきたのには、女性の服従と家族を縛る法体系が寄与してきました。
そういった夫婦や家族は今後どうなっていくのでしょうか。これからの離婚率の推移について考えてみました。
2003年01月02日
2010年12月17日改
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夫婦円満の秘訣
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米国では女性パートナーが受ける家庭内暴力がかなり多いことが知られています。
また,社会的にも女性が町を一人歩きすることが危険であるような雰囲気があります。
一方,日本の社会でも,妻は夫に対して服従する慣習から抜けきれず、相当深刻な暴力でもそのほとんどが隠れています。
日本の家庭におけるそういった実態が,女性の地位の向上と意識のたかまりに伴って社会的に次第に明らかになってきています。
1997年の統計によれば、日本では離婚率と婚姻率の比は28%程度になっています(米国では30%以上)。
これは,結婚時期と離婚時期がずれている統計であるために,結婚した夫婦が離婚する割合をそのまま示しているわけではありません。
しかし、それほどはずれてはいないでしょう。
急激な人口減少と晩婚化などの影響で婚姻が次第に少なくなってきていることを勘案すれば,
今では、結婚した夫婦のおおむね25%程度が離婚していると考えるべきではないでしょうか(12.補足へ)。
日本では、離婚が社会的に認知されにくく、また離婚すると大きな不利益を被ります。
統計に表れた離婚の数は、それを覚悟の上で、我慢の限界を超えて役所に届けを出した人たちの割合です。
ということは、何とかなるものなら離婚したいという離婚予備軍が同数ぐらいはいるでしょう。
役所に届けを出していなくても実質的に破綻して、別居しているカップルもこれに含まれます。
つまり、結婚したカップルのうちの50%程度は、実質的に破綻するか,しても仕方がないという関係に至ってしまうのではないでしょうか。
さらに、離婚するほどではないが、この男の世話なんてできればしたくないとか,
できれば他の人と結婚したかったと思っている人が残りのうちの半分,すなわち25%程度はいるでしょう。
そう考えてくると、最後に残った25%程度だけが、自分たちの結婚を「よかったな」と思っているのではないでしょうか。
どちらかが死ぬまで、「愛しあっています」と双方が認めあえる人たちはさらに減って、ほんの5%か10%ぐらいにすぎないかもしれません。
といったことから考えると,現在表れている離婚率は将来大きく変わる危険性を秘めています。
「人生ってこんなもんだろう」と諦めて生きてきた古い時代の日本人達の意識が「こんなの変だ」に変わった時、
これまでパートナーとの関係の不満な状態を我慢してきた日本人の考え方が変化し,一億総離婚の様相を呈するかもしれません。
現在の日本の専業主婦は、税法上の保護と年金制度上の制約などがあり、強い力で夫に縛られています。
それらは次第に修正・緩和されていくにしても、現在の女性の自立を妨げていることは明らかです。
彼女たちにとって自立と保障がなければ離婚はなまやさしいことではありません。
逆に言えば、これらの足かせを支えている人たちの中心は、女に自立されては困る横暴な夫達と言ってもいいでしょう。
こういう社会的に強制されている従属関係、隷属関係がなくなった時に女性達は一斉に横暴な夫達を捨てるはずです。
また、昨今は景気の悪さから、女性が息を潜めている環境にあります。
「仕事につけない、ついても待遇が悪い。」
「リストラでは真っ先に首切りの対象になる。」
そんな状況では、女性の自立はたやすくありません。
しかし、そういった悪条件の中にあっても、これからの10年ほどの間に女性の意識は大きく変化しそうです。
制度が変わらなくても、それは起こりえるわけです。
これまで横暴な夫達に圧迫され、それに耐えてきた女性の反逆は相当なものになるでしょう。
もし、男性が今までと変わらぬ意識でいれば,制度が変わり女性が自立した生活のできる環境が整ったとき,
離婚率はあっという間に50%に達するはずです。
一方、女性がどんどんわがままになっていくと,男性の側がそれに愛想をつかすことになります。
近い将来,これまでの典型的な男女の力関係が逆転し,男性が逃げ出さざるを得ない形の離婚も増えていきそうです。
もちろん,社会は自律作用を持っています。
女性の立場が強くなり,女性の側からの離婚の通告が増えてくると,男性側の意識も変化し,
より平等な人間関係が作られるようになって離婚にブレーキが掛かるでしょう。
いわゆるフィードバック制御が働くようになって,現実の社会としては離婚率の上昇もある程度のところで鈍化すると考えられます。
しかし,これは,多くの試行錯誤と痛みを伴う個人の努力の結果として表れるものです。
夫婦円満のための意識変革を怠っている人達の関係の将来を保証するものではありません。
今,社会不安が急激に高まってきました。
社会の中で信じてきたもの,頼ってきたものが揺らいでいます。
一方、老後に二人で過ごす時間が長くなり,その中で,人々はパートナーや家族とのつながりの大切さに気づきつつあります。
少々いやでも我慢しようとか,自分を相手に合わせようという気持ちを持つ人たちが増えているように思われます。
つまりこれまで述べてきたような悲観的な方向とは別に,新しい関係ができつつあるかもしれません。
あるアンケートで,生まれ変わっても同じ人と一緒になりたいかという問いに対して,
約半数ずつの夫婦がYES,NOと答えていました。
しかし,問いかけは無作為抽出でも,こういったアンケートに回答する人は比較的安定した人ではないかということ,
またはメンツがあって否定的な回答をしにくい,と考えられます。
したがって,実態が把握されているとは、とても言えません。
この文章は1997年のデータを基に当時書いたものを少し修正したのですが,状況はかなり深刻な方向に進んでいます。
離婚率/婚姻率は2001年には35%になってしまいました。
2001年,日本の婚姻率は6.4,離婚率は2.27です(いずれも人口1000人あたり)。
2001年の後のデータがどうなるかと怖いほどでしたが、その後少し離婚率が上がった後、落ち着いてきました。
景気がよくなると離婚率が下がると言われます。
しかし、2008年秋のリーマンショックの後、2009年(概算値)でも意外にも上がっていません。
景気が悪過ぎて、先行き不安なために却って離婚しづらくなっているのでしょうか。
それとも、これから上がるのでしょうか。
いずれにしても、離婚率/婚姻率は2009年までの5年間ほどは、35%程度で落ち着いていると言えます。
しかし、最近は結婚前に同棲することが増えています。
見極めをつけてから、または子どもができてから届を出すというわけです。
つまり、この数字には、同棲したあと結婚しないで解消する形態の「別れ」は含まれていません。
それが、数字上の離婚率を上昇させていないということも言えるでしょう。
ともあれ、結婚するときには誰も望まなかった離婚を、3組に1組は味わうことが定着してきたようです。
(小波盛佳 Moriyoshi Konami)
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