>> ”知っておきたい・粉体技術に関する用語の実践コメント”      小波技術士事務所 小波盛佳

 粉体を取扱う人に知っていただきたい用語についての実践技術に基づく説明です。
2013年01月01日  
2013年03月03日改 
2013年10月01日追 
2015年06月25日追 

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アーチ あーち
粉体貯槽の排出口またはその上方で粉体層が落下せずに閉塞すること、またはその閉塞している状態や形状のことである。
アーチブレーカ あーちぶれーか
粉体貯槽からの排出時に閉塞しないようにするための装置である。
アスペクト比
アスペクト比(アスペクトひ)は、3次元または2次元の対象物の形状を2次元でとらえたときの長軸と短軸の比率である。
圧搾 あっさく
湿潤粉体層に機械的に圧力を加えることで含液率を低下させる(搾る)ことである。
圧縮度 あっしゅくど
外部からのタッピング、振動、加圧などによって粉体層の体積が減る程度を示す値である。単位は〔%〕または〔-〕。
圧力損失 あつりょくそんしつ
流体が機械や管内などの流路を通過するときに生じる、単位時間、単位流量あたりのエネルギーの損失(減少)である。単位は〔Pa〕。
安息角 あんそくかく
気体中の粉体が堆積している状態で自由な表面が作りうる最大の傾斜角である。単位は〔°〕または〔rad〕。
エアスライド えあすらいど
水平面に対して僅かに傾斜した樋(とい)状の流路の下方から空気を吹き出し、すべり摩擦を極小にして粉体を移動させる輸送・供給装置である。
かさ密度 かさみつど
気体中の粉体が層として存在しているときの、その層の体積あたりの質量である。単位は〔kg/L〕。
硬さ かたさ
固体に外部から圧縮作用あるいは引っ掻き作用が加わって変形させられたときの抵抗力またはその力の程度を表すものである。
吸引輸送 きゅういんゆそう
粉体を輸送する手段である空気輸送(気力輸送)のうち、負圧状態の流れを用いる方法である。
空気源 くうきげん
空気に仕事をさせるためにエネルギーを与えて加圧または減圧する装置である。
空気輸送 くうきゆそう
管内における空気の流れを利用して粉体を輸送することである。
空隙率 くうげきりつ
粉体層内において、粒子に占められていない空隙の体積が全体に占める割合である。単位は〔−〕または〔%〕。
形状係数 けいじょうけいすう
粒子の形状の複雑さを円または球に比べた数値として表したものである。単位は〔-〕。
公差 こうさ
ある基準値に対して許容される範囲であり、一般に寸法公差を意味し、基準となる寸法に対して許される差を示すことが多い。
固結 こけつ
粉体層の粒子同士が固着することで結合し、単一粒子の集まりの状態には戻らなくなることである。
混相流 こんそうりゅう
固体、液体、気体のうち、2つ以上の相が同時に存在する流れである。
コンプレッサ こんぷれっさ
圧縮比2以上の圧縮空気を発生する装置である。
終末沈降速度 しゅうまつちんこうそくど
流体(気体または液体)中を粒子が落下する速度である。単位は〔m/s〕。
真密度 しんみつど
その粉体の質量を固体の体積で割った値である。単位は〔kg/L〕。
真密度測定−液浸法 しんみつどそくてい−えきしんほう
粒子の真密度測定法のひとつで湿式の方法である。
真密度測定−気体加圧法 しんみつどそくてい−きたいかあつほう
粒子の真密度測定法のひとつで、乾式の方法である。
水分 すいぶん
粉粒体中に含まれる分離可能な水分子の量を、固体に対する質量比で示したものである。単位は〔%〕または〔−〕。
精度設計 せいどせっけい
工作品等の精度を管理するための設計法である。
せん断特性  せんだんとくせい
粉体層をせん断する時に働いている応力(荷重)の関係を特性として示したものである。
ターボブロワ たーぼぶろわ
遠心式送風機の一つで、集塵の吸引用としてよく使用される。
二相流 にそうりゅう
固体、液体、気体のうち、2つの相が同時に存在する流れである。
比表面積 ひひょうめんせき
粉体の体積または質量あたりの表面積である。単位は〔1/m〕または〔m2/g〕。
付着・凝集  ふちゃくぎょうしゅう
粉体とそれに接する装置等の材料から離れない、また粉体同士で離れなくなる現象である。
フレキシブルコンテナ ふれきしぶるこんてな
フレキシブルな材料で作られた主に粉粒体、廃棄物等を輸送するための袋型の容器である。
分級 ぶんきゅう
粉体を物性の違い、主にサイズの違いによって分けることである。
粉体 ふんたい
粉体は、広義には、大きさを問わず固体粒子の集まりである。この意味では粉粒体と呼ぶこともある。
粉体圧 ふんたいあつ
粉体層内で粉体同士または外部に対して生じる圧力である。単位は〔Pa〕。
粉体技術 ふんたいぎじゅつ
粉体を扱う技術である。
粉体工学 ふんたいこうがく
広義の粉体を扱う学問で、機械、化学工学、化学、土木、物流などの多くの分野に関連する学際的な学問である。
粉体層の気体透過  ふんたいそうのきたいとうか
 粉体層内部を気体が通過することである。
粉体のバルクハンドリング ふんたいのばるくはんどりんぐ
粉体を、何かに充填・包装したのでない状態(バルクと呼ぶ)で取り扱うことをいう。
閉塞防止法−貯槽内の へいそくぼうしほう−ちょそうないの
貯槽内の粉体層が排出せずにとどまる閉塞の現象を防止する方法である。
粉粒体 ふんりゅうたい
広義の粉体、すなわち、塊や粒体を含め、大きさを問わない固体粒子の集まりである。 →粉体
偏析 へんせき
粉体同士が粉体層内で相対的に移動し、物性の違いによって偏在してしまうことである。
摩耗 まもう
粉体が関わる摩耗には、粉体そのものの摩耗と粉体が引き起こす摩耗がある。
摩耗−粉体による まもう−ふんたいによる
粉体が装置や配管に対して速度を持って接触することで生じさせる摩耗である。
摩耗−粒子の まもう−りゅうしの
粉体粒子が、ハンドリングされている間に摩耗することである。
摩耗と磨耗 まもうとまもう
材料に力が加わって摩り(磨り、擦り)減ることである。
見かけ密度 みかけみつど
粒子が内部を含む全体で同じ固体物質によって構成されているとみなした見かけ上の真密度である。単位は〔kg/L〕。
粒子径 りゅうしけい
単一粒子の大きさまたはそれに変わる代表値である。単位は〔m〕。
粒子径の分布  りゅうしけいのぶんぷ
現実の全ての粒子群がもつ粒子径の分布である。
ルーツブロワ るーつぶろわ
ロータリー型ピストンを持つ容積式送風機で、粉体の低圧式空気輸送によく使用される空気源である。
レベル計 れべるけい
粉体の有無、あるいはその堆積高さを検知する計器である。
ロスインウェイト計量 ろすいんうぇいとけいりょう
粉体の貯槽部と排出部が一体となったものの質量を連続的に測定し、排出の流量または排出量を知ることで、定量供給または秤とり計量を行う方法である。
ロスインウェイト定量供給 ろすいんうぇいとていりょうきょうきゅう
排出(供給)装置と一体になった槽と内容物の質量を合わせて計測し、排出し続ける物質の減量速度を計算して、所定の流量が得られるようにフィードバック制御を行う定量供給法である。
ロータリーバルブ ろーたりーばるぶ
横置き円筒形で上下に開放ノズルを持つケーシングの中で、水平の軸の周りに数枚の放射状の羽根を持つロータを、僅かなクリアランスを持って回転させることによって、上下の空間をある程度シールしながら粉体を重力落下させる供給・排出機である。
ロードセル ろーどせる
導体に応力が加わって変形する(ひずみを生じる)と電導抵抗が変化して、そこに加わっている応力を逆算することができるひずみゲージを用いた荷重センサーである。

■  アーチ あーち

粉体貯槽の排出口またはその上方で粉体層が落下せずに閉塞すること、またはその閉塞している状態や形状のことである。

貯槽内で閉塞している粉体層の下表面はアーチ(ドーム:円天井)形になることが多いためにこの名称が付けられている。アーチの内部では粉体の内部摩擦により、またアーチが壁部と接触する部分では粉体と壁との壁摩擦により、粉体層が崩れ落ちない状態になっている。この閉塞状態をなくすために多くの工夫がなされているが、粉体の種類によっては非常に難しいことがある。水分が多い場合は液架橋によって生じやすく、さらに時間が経過すると固結によって強固になりやすい。 粉体層の空隙率が低いほど生じやすい。アーチのできやすさを試験する装置として、2次元貯槽の出口の幅および壁面の傾斜角度を変えられるようにした試験装置が考えられている。一般に貯槽の閉塞、粉体の閉塞ということが多く、現場では棚つりなどと呼ばれる。 →アーチブレーカー

■  アーチブレーカ あーちぶれーか

粉体貯槽からの排出時に閉塞しないようにするための装置である。

貯槽の閉塞に対して、貯槽内に設置して重力による自由流れを制御するもの、壁面部や貯槽内部の粉体を撹拌するもの、壁面に衝撃や振動を与えるものなど、さまざまな対策に対して、各社がこの名を付けて製品化している。すなわち、特定の方法を指すものでなく、古くから多くの手段の一般名称としてよく使用されている。 →アーチ

■  アスペクト比

アスペクト比(アスペクトひ)は、3次元または2次元の対象物の形状を2次元でとらえたときの長軸と短軸の比率である。

アスペクト比は適用される場面によって、定義を確認しながら使用する必要がある。粒子について考えるときでも、同様である。粒子の場合、一般に投影像の長軸と短軸の比率をアスペクト比とする。平板上の粒子について、厚さ(高さ)に対する投影像の平均径の比で示すこともある。形状が定まっている場合、例えば円筒状では直径に対する高さの比で表すこともある。この場合、名称を「アスペクト比(高さ/直径)」のように示せば、定義も示せる。 JIS Z 8901-2008「標準粒子」の粒子径測定装置検定用粒子は、粒子形状として、球形粒子で95%以上がアスペクト比1.0〜1.1の範囲に入ることと決められている。この用語は多くの分野で用いられており、それぞれ算出の考え方が定義されている。例えば、微細加工分野では深さと穴径の比で示される。数値で表すことが多いが、ディスプレイ画面のように整数の比として、例えば4:3のように表すこともある。長軸と短軸に物理的な意味の差(直径と高さなど)がない場合は、「細長さ度(長辺/短辺:1以上の値)」の意味合いで定義されることが多い。

■  圧搾 あっさく

湿潤粉体層に機械的に圧力を加えることで含液率を低下させる(搾る)ことである。

連続装置としては、ベルトプレスフィルタがよく用いられる。これは2つのベルトの間に挟み込んだ湿潤層にローラで力を加えて液分を搾りだすものである。連続装置としては他にスクリュプレスフィルタがあり、これはスクリュの先端部で自由排出させずに拘束し、ケーキに圧力を加える。圧搾は、前段に脱水工程を持たせてケーク状態になったものに適用される場合と、湿潤粉体を直接扱う場合がある。圧搾だけでは圧縮された粉体層間に存在する液分を除くことまではできない。

■  圧縮度 あっしゅくど

外部からのタッピング、振動、加圧などによって粉体層の体積が減る程度を示す値である。単位は〔%〕または〔-〕。

粉体のかさ密度の中で、できるだけ粗になるように測定した、「ゆるみかさ密度」がAであり、所定のタッピング等によって固められた時の「固めかさ密度」がPであるとき、圧縮度は(P-A)/Pで表す。圧縮度が低いほど流動しやすいのが普通で、粉体の流動性の目安として用いられることがある。粉体層の水平方向の断面積が一定の場合、高さが下がった割合に相当する。かさが減る度合いという意味でかさべり度と呼ぶこともある。 流動性の程度をよく表すとされ、R.L.Carrの判定では、7段階に分けられたうち、15%以下が良好(架橋対策不要)、32%以上が不良(強力な対策が必要)とされている。 再現性を得るためには、用いるメスシリンダーの直径、固めかさ密度を得るための粉体のタッピング衝撃強さと回数、試験に用いる粉体の質量を同じにする必要がある。 類似の物性値に、Hausner 比(= P/A)があり、物性の判定に利用されている。これはかさ密度の増加の度合いとして示すもので、基本となる測定方法は同じ考え方である。薬局方では100 g の試料を用いて250 mL のメスシリンダーによって行うことを推奨するが限定するものではないとされている。

■  圧力損失 あつりょくそんしつ

流体が機械や管内などの流路を通過するときに生じる、単位時間、単位流量あたりのエネルギーの損失(減少)である。単位は〔Pa〕。

圧力損失の単位(次元)は圧力と同じであり、ある流路の区間内の圧力損失は、その入口と出口での全圧の差である。全圧はその位置で流体が持つ静圧と動圧の和である。圧力損失は、狭い滑らかな流路を遅い速度で通過する層流状態では流体速度にほぼ比例し、広く速い乱流状態では流体速度のほぼ2乗に比例する。相流と乱流の間は遷移流と呼ばれ、圧力損失式としていくつかが提示されている。これらの流れの状態はレイノルズ数によって知ることができる。人の血液循環系では、血管がコレステロールなどで狭くなると血液の流量を確保しようとして速度が上がり、高い圧力損失が発生する。これが高血圧で、血管を広げる、血液の粘度を下げるなどの対策が考えられている。

■  安息角 あんそくかく

気体中の粉体が堆積している状態で自由な表面が作りうる最大の傾斜角である。単位は〔°〕または〔rad〕。

最もよく知られているのは、一点から落下させて円錐状またはそれに近い形状ができるときに表れる注入角である。他に、粉体層を傾斜させたときにできる傾斜角、下部の孔から排出させたときにできる排出角などがある。 測定するときは、それを適用する状況を想定し、それに見合う値を求める。流動性などの判定に用いるときは、再現性が得られるようにする。貯槽や装置に適用するための測定には、ある程度の斜面の長さが必要である。 安息角は、その言葉のイメージに反して、決して安息できる状態ではなく、今にも崩れそうなぎりぎりの状態を表す、粉体にとってストレスの高い状態の角度なのである。

■  エアスライド えあすらいど

水平面に対して僅かに傾斜した樋(とい)状の流路の下方から空気を吹き出し、すべり摩擦を極小にして粉体を移動させる輸送・供給装置である。

貯槽の底面に配置して小さな傾斜で貯槽外に排出することもある。エアスライドの傾斜角は3〜8度程度、また空気吹き出し速度は1〜3(m3/min)/m2程度が一般的である。流路が長くなると、吹き出した空気量が累積されるため、その空気を外部に排出する必要が生じることがある。 空気を吹き出す面には多孔質材料として、キャンバス、焼結された金属多孔板、樹脂多孔板などが用いられる。この材料は粉体との間で強い摩擦力を受けることがないため、粉体から受ける摩耗は僅少である。 粉体を上から下に自然に流れさせるには、鉛直またはかなり大きな傾斜をもったシュートが用いられるが、エアスライドはこの傾斜を小さくし、設備全体の高さを低くすることに役立つ。 エアスライドの名は、古くは登録商標だったが、一般名称になった。他に商品名としてエアスライダ、エアレーションスライダーなどと呼ばれている。

■  かさ密度 かさみつど

気体中の粉体が層として存在しているときの、その層の体積あたりの質量である。単位は〔kg/L〕。

同じ粉体層でも、その状態によって、特に外部から加わる荷重によって異なる値になる。粉体層形成の条件を一定にして定義された、「ゆるみ(ゆるめ)かさ密度」、「固めかさ密度」などの用語が用いられる(R.L.Carr)。 同種の粉体を扱うときは流動性の指標の一つとして用いられることもあるが、その場合は測定装置・方法の再現性が必要である。実際の設備・装置で利用するには、その目的に合うような測定方法を用いることが望ましいが、それについての汎用的な指針はないので、場合に応じて測定方法を工夫する。 古くは見かけ密度という用語も併用されていたが、これは、他の意味で使用されることが多く、現在では混同を避けるために、この意味では一般に使用されない。

■  硬さ かたさ

固体に外部から圧縮作用あるいは引っ掻き作用が加わって変形させられたときの抵抗力またはその力の程度を表すものである。

粒子の硬さの判定には、基準となるサンプルを用いて比較する半定量的方法、外力を加えられた結果を数値で示す定量的方法がある。前者では中学校の理科で教えるモース硬度が有名である。これはサンプルが限られていて、とびとびの値しか得られないが、測定上の条件が一定で再現性が高く客観的な値となる。後者には多くの方法が提示されている。測定条件の差が小さい方法としては、2つの平行板に挟んで破壊する力の測定がある。それらを含めて、実際に用いられる硬さの測定法は多様であるため、一義に決めにくい難しさがある。

■  吸引輸送 きゅういんゆそう

粉体を輸送する手段である空気輸送(気力輸送)のうち、負圧状態の流れを用いる方法である。

加圧する空気輸送に対して、次の長短がある。長所は、?粉体の供給部を含む輸送系全体が負圧であるため、粉じんが発生しにくい、?温度が高くなりにくい、?粉体に空気圧がかかり圧縮されやくい、?供給(吸引)口の構造が簡単である、?粉体処理操作から直接輸送しやすい、などである。短所として、?動力が少し大きくになる、?輸送速度が高くなる、?排出部での空気と粉体の分離に工夫が必要である。?粉体に負圧がかかり膨張しやすい、などである。短距離の簡便な輸送には好都合であり、少々の動力効率の低さはカバーできると考えられている。

■  空気源 くうきげん

空気に仕事をさせるためにエネルギーを与えて加圧または減圧する装置である。

空気輸送や集塵など、粉体の操作に用いられる空気源は、コンプレッサ(100kPa以上)、ブロワ(10〜100kPa)、ファン(10kPa以下)に分けられる(機械工学便覧)。コンプレッサー以外は、正圧、負圧の双方に用いられる。他に負圧専用の真空ポンプ、および特殊なものとして、圧縮空気を吹き出すことによって気体を吸引して負圧を発生させるエジェクタがある。高圧輸送にはコンプレッサが用いられる。低圧空気輸送には容積式のルーツブロワ、リングブロワ(少風量)が多用されるが、比較的低い圧力の場合、遠心式のターボブロワも用いられる。集塵で吸引に用いられるのはターボフロワが一般的である。用途ごとに望ましい流量特性があり、所要の風量と圧力が出ればよいというものではない。

■  空気輸送 くうきゆそう

管内における空気の流れを利用して粉体を輸送することである。

5〜50kPa程度の圧力で輸送する低圧輸送、100〜700kPa程度で輸送する高圧輸送があり、また、負圧を用いる吸引輸送もある。広義の空気輸送には、僅かに傾斜したシュートの底面から空気を流して粉体を移動させるエアスライド(エアスライダ)を含む。 この「空気輸送」という簡潔な呼び名は空気を送るのかと勘違いされそうであるが、産業界で定着している。他に気力輸送とも呼ばれる。操作を正確に表すなら、窒素などによる輸送も含めて、「気体力粉体輸送」、または「気体駆動型粉体輸送」ぐらいの呼称が妥当だろうか。空気輸送では防爆などの理由で酸素を嫌って窒素で輸送することが行われているが、と空気は物性が近いので、ほぼ同じ条件で輸送することが可能である。

■  空隙率 くうげきりつ

粉体層内において、粒子に占められていない空隙の体積が全体に占める割合である。単位は〔−〕または〔%〕。

空間率とも呼ばれる。数値を使用する目的によって、固体の内部に存在する空隙を含めるかどうかの差がある。変形しない等しい径の球を最密状態に充填した時の空間率はπ/√18(約0.25952)と言われる(ガウス)。粒子径に分布があればさらに小さい値もあり得る。最密状態でない一般の粉体層では、外部から加わる圧力によって粉体層が圧密されると空隙率が下がる。異なる粉体層を比較するとき、この空隙率は粉体層の充填状態を示す客観的な指標として役立つ。粉体層の力学に注目する時は必ず測定、算出する。 岩石学では、多孔体の固体部分に対する孔隙(固体の内部の孔)の体積の割合として、孔隙率の用語が用いられる。 ふるい分けの分野では、ふるい網全体に対する空隙の面積の割合を示す。

■  形状係数 けいじょうけいすう

粒子の形状の複雑さを円または球に比べた数値として表したものである。単位は〔-〕。

長さの比で表す長短度(長径に対する短径の比)、扁平度、円形度、球形度、比表面積形状係数などがある。 例えば、円形度には、粒子の投影面積に相当する円形粒子の直径である投影面積相当粒子径(Weywood の円相当径XH)の円周長さと、投影された周長さCの比で表す円形度πXH/Cがある。 動力学的形状係数として、実際に作用する流体抵抗力とその粒子と同体積の球形粒子に作用する流体抵抗力の比率があるが、これは主に層流域だけに適用され、乱流域では複雑なものになる。 周長さで形状係数を算出する時、表面の粗さとそれに対する解像度、計算手順などが大きく影響するため、目的にかなうように算出方法を決定し、共通化する必要がある。

■  公差 こうさ

ある基準値に対して許容される範囲であり、一般に寸法公差を意味し、基準となる寸法に対して許される差を示すことが多い。

機械類を製作する上で、誤差は必ず生じるため、設計・製作図で公差を決めることは重要である。誤差を抑えるための経費とその必要度を勘案して決定され、製作品の場合、仕上がったものに対しては、その公差内に入っているか検査する。すべての製造品を公差内で収めるように管理するか、それとも公差から外れるも製造して検査で除外するか、その歩留まり率をどうするかは、製造全体およびそれが社会に及ぼす影響などを含め、コストパフォーマンスを検討して決定する。十分な数の製品の値を統計的に見ると、製造段階で公差を外れた物として除外された物の比率が分かる。規格化された公差もあるが、公差の「公」には、公的という意味は必ずしもなく、一設計者が製作側に対して指示する、いわば「私」的なときにも用いられる。

■  固結 こけつ

粉体層の粒子同士が固着することで結合し、単一粒子の集まりの状態には戻らなくなることである。

固結には次の2つがある。一つは、高温状態で粒子が溶融した後に冷却して固化し、粒子間を結合させる焼結である。もう一つは水分(液分)に固体の粒子が溶け込んだあとに濃度が高まって晶析が発生し、その結晶体が粒子間を結合させるものである。後者のケースは吸湿しやすい粉体特に塩類の取り扱い中によく発生する。水分が増加する段階でなく、水分が減少して乾燥・晶析を生じるときに発生し次第に強固になるため、水分即ち環境湿度の変動を極力抑えることが必要である。これら以外に化学反応によって粒子同士が固着するものもあるが、粉体の固結の概念からは外すことが多い。

■  混相流 こんそうりゅう

固体、液体、気体のうち、2つ以上の相が同時に存在する流れである。

通常扱われている対象には三相は少なく、大半が二相流である。粉体の扱いでは、二相流の項で述べたもの以外に、固体−液体−気体の3相が存在する泡浮上分離(スラリーに下方から気泡を吹き込み、その浮上途中で粒子を同伴させて分離すること)などがある。混相状態での特性は、その混ざり方によって大きく異なる。流体力学では混相流と呼ぶが、地盤環境工学では多相流と呼んでいる。

■  コンプレッサ こんぷれっさ

圧縮比2以上の圧縮空気を発生する装置である。

粉体の高圧輸送にはこの圧縮空気が用いられる。コンプレッサは、古い時代の往復式からスクリュ式への移行が進み、騒音の低下が著しい。また2段圧縮の途中で冷却するなどの工夫によって効率も向上している。規模の大きな工場では、機械を数台設置し、需要に応じてシステム的に停止、運転を指令する台数制御が行われ、省エネルギー等に貢献している。必要とする圧力がコンプレッサの標準出力ほど高くない場合、最高圧力を制限して運転することで、消費動力を低減できる。

■  終末沈降速度 しゅうまつちんこうそくど

流体(気体または液体)中を粒子が落下する速度である。単位は〔m/s〕。

省略して終末速度、沈降速度とも、または終端速度とも呼ばれる。粒子径の測定に用いられる原理の一つで、その他、粉体の空気輸送、流体分級などさまざまな現象の理論計算の基本となる。 100μm程度以下の粒子では、落下開始直後、ほとんど瞬時に流体の抵抗力と落下する力がバランスして一定の速度に達することから、実質的に最初からその速度であるとして扱われる。

■  真密度 しんみつど

その粉体の質量を固体の体積で割った値である。単位は〔kg/L〕。

定義は分かりやすいが、測るのは簡単ではない。測定する方法には、液浸法と気体法がある。気体の方が液体よりも内部まで浸透するが、いずれにしても粉体の内部に流体が届かない空間があると、正確な値は測定できない。この閉じた空間をそのままにして測定したときの値は一般に見かけ密度と呼ばれる。閉じた空間を開放して測定するには、通常は粉砕の前処理を行う。

■  真密度測定−液浸法 しんみつどそくてい−えきしんほう

粒子の真密度測定法のひとつで湿式の方法である。

まず、ピクノメータと呼ばれるガラス製の容器に、秤量した粉体と、温度に対する密度が分かっている液体(通常は水)を一緒に入れる。これを煮沸して粒子の内部または粒子間にある気体を追い出した後に、所定の温度にする。このときの質量と体積および粉体の質量から真密度を算出する。この場合、粉体が液体に溶けるか、逆に吸水してしまうと誤差が出る。また、気体が完全には追い出されない場合も誤差が出る。

■  真密度測定−気体加圧法 しんみつどそくてい−きたいかあつほう

粒子の真密度測定法のひとつで、乾式の方法である。

一例を示す。二つの密閉できる小さな部屋を用意し、片方に粉体を入れ、同じ圧力になるように監視しながら、それぞれの部屋にピストンで圧力を加えていく。粉体のある方はその体積の分だけピストンが進まないので、体積が分かる。粉体がその気体を吸着または吸収して誤差が大きいときは、不活性ガスを使う。水分を吸着する物質は多いので、空気を用いるときは水分の変化に伴う誤差に注意する。

■  水分 すいぶん

粉粒体中に含まれる分離可能な水分子の量を、固体に対する質量比で示したものである。単位は〔%〕または〔−〕。

含水率とも呼ばれる。基本となっている定温乾燥法として,対象物質ごとに標準の方法がJIS(日本工業規格)やJAS(日本農林規格)などで定められている。例えばJISには,穀類で102〜108゜C,土壌で105〜110゜C,などと示されている。また,農産物検査法では農産物の水分の測定法が定められており,例えば玄米は105゜Cで5時間となっている。 含水率を表現する方法には、湿量基準(水分を除く前の総質量で水分量を割った値:wet base)と乾量基準(水分を除いたあとの質量で水分量を割った値:dry base)の2種があり、一般的には前者、乾燥の分野では後者が用いられる。水分の値は、乾燥条件により差があり、また、結晶水を放出させるかどうかによって差が生まれる。温度を次第に上げていくことで得られる質量の変化(減量線)から水分とその物質との関係が分かる。温度を上げることで、酸化するなど、物質が化学変化するようなケースはよく見極めて温度の上限を決める必要がある。乾燥法による水分測定では、その到達温度における平衡水分と元の水分の差を測定していると認識すべきである。

■  精度設計 せいどせっけい

工作品等の精度を管理するための設計法である。

一例を示す。精度(誤差)がδ1、δ2である部品を積み重ねるときに、この誤差の合計がδ1+δ2であるとする考え方(互換性の方法)と、(δ1の2乗+δ2の2乗)の0.5乗であるとする考え方(不完全互換性の方法:統計的手法)がある。前者は、数が少ない生産で極力不良品を出さないという要求があるとき、後者は大量生産で不良品をある程度見込んでよいときに用いられる。実際の設計・生産の現場では、こういった考え方を勘案して精度設計を行っている。

■  せん断特性  せんだんとくせい

粉体層をせん断する時に働いている応力(荷重)の関係を特性として示したものである。

一般に粉体の内部摩擦の特性を指すが、壁摩擦を含むこともある。粉体層を形成する粒子間に加えられた力とそれによるせん断破壊との関係を内部摩擦特性と呼び、壁と粉体層との間のすべり摩擦特性を壁摩擦と呼ぶ。これらの特性などを詳しく測定し検討することで、貯槽内の粉体の流れおよび排出時の閉塞を予見する設計法がJenikeなどによって提案されている。粉体の挙動はばらつきが大きいため、実際の設計では、十分な安全係数を考慮する必要がある。

■  ターボブロワ たーぼぶろわ

遠心式送風機の一つで、集塵の吸引用としてよく使用される。

低い濃度の空気輸送に利用されることもある。圧力に対して流量が変化しやすいので、負荷として表れる大きな外乱がないことを前提に使用する。また、少風量で使用すると、サージングによって風量が大きく振れて振動・騒音が生じ、運転に支障が出ることがあるので注意が必要である。

■  二相流 にそうりゅう

固体、液体、気体のうち、2つの相が同時に存在する流れである。

三相を表す混相流の一部を示す概念である。粉体の扱いにおける主なものに、?固体−気体系として、粉体の空気輸送(気力輸送)および流動層による造粒・乾燥、?固体−液体系としてスラリー輸送などがある。

■  比表面積 ひひょうめんせき

粉体の体積または質量あたりの表面積である。単位は〔1/m〕または〔m2/g〕。

体積基準としても、粒子の体積〔Lの3乗〕に対する表面積〔Lの2乗〕で単位は〔Lの−1乗〕となり、無次元でなく単位に依存する。工業的には、測りにくい体積でなく質量基準で示す。例えば、実際に吸着などに利用される活性炭などでは、比表面積1000−3000m2/g程度の値が一般的である。数万m2/gの値をとる物質もある。球粒子を想定して単純に比表面積径(表面積が等しい球の直径)に換算すればnmまたはÅのオーダーになってしまう。粒子径が実際に小さいわけではなく、これらの材料の比表面積には粒子の外表面ではなく細孔など内部の構造が大きく影響していることが分かる。

■  付着・凝集  ふちゃくぎょうしゅう

粉体とそれに接する装置等の材料から離れない、また粉体同士で離れなくなる現象である。

付着・凝集力は、主に分子間力(ファンデルワールス力)によるもので、その力が粒子の自重に比べて大きい時に、付着・凝集が発生するという考え方が一般的である。これを防ぐには、桁違いに小さい凝集防止用の粒子を粉体の表面に付着させるなど多様な方法がある。他に、付着水分や静電気による付着・凝集がある。

■  フレキシブルコンテナ ふれきしぶるこんてな

フレキシブルな材料で作られた主に粉粒体、廃棄物等を輸送するための袋型の容器である。

フレキシブルコンテナバッグとも呼ばれ、略称としてフレコン、コンテナバッグ、フレコンバッグなどがある。材質としてポリプロピレン、ポリエチレンなどの人工樹脂製のシートを用いて、さらに上部に丈夫な吊りベルトが取り付けられている。空の状態では折りたたむことができ、返送や廃却の運送に都合がよい。通常、500〜1000kg程度の粉粒体を充填する。上方の開放部は、狭い筒型になっているのが普通で、内容物の充填後にこれをひもで縛るなどして封をする。出口としては、次の3種が代表的である。?上方の開放部を兼用するもの、?下方に上方と同様の狭い筒形があってそれから排出するもの、?下底面の大部分がチャックによって開放状態になるもの、?では、吸引ノズルを差し込んで吸引輸送で排出することが多いが、このとき、容器の内壁にノズルがくっついて吸引困難な状態になりやすく、それを防ぐための工夫が必要である。特に、汚染防止、吸湿防止の目的でバッグの内側にビニール袋を用いることもあり、作業の完全自動化を難しくしている。使い捨て、または数回利用するだけのワンウェイバッグと、長期間利用することを前提とした丈夫なランニングコンテナがある。充填された状態では、人手では運べず、吊ベルトをクレーンやフォークリフトで吊るか、パレットに乗せた状態で搬送する。

■  分級 ぶんきゅう

粉体を物性の違い、主にサイズの違いによって分けることである。

液体または気体の流れの中で分ける流体分級とふるい分けが主な方法である。 流体分級では、粒子の終末沈降速度の違いによって分ける方法がほとんどである。ある程度の粒子径までは遠心沈降効果を利用したサイクロンがよく用いられる。小さい粒子径で高い分級効率で分級する場合は、高速回転で機械的な分離力を与える装置が用いられる。 ふるい分けには、ふるい網面に対して垂直方向の運動を伴うバイブレーティングスクリーンと、ふるい網面に対して水平方向に運動させる面内ふるい(シフタ)とがある。試験用のふるい網として目開きと線径を定めたJIS「標準ふるい」があるが、産業用にはさまざまな目開きと線径のふるい網が用いられる。どのようなふるい目を使っても、その目開きは一定ではなく製造過程などで生じる分布がある。

■  粉体 ふんたい

粉体は、広義には、大きさを問わず固体粒子の集まりである。この意味では粉粒体と呼ぶこともある。

狭義には、100μm程度より大きな粒体を除き、それより小さい範囲を指すが、以下、広義の意味で述べる。粉体はさらに、そのサイズによって、概ね、数十?程度以上の塊、0.1〜1μm程度のサブミクロン粒子、1〜100nm(=0.1μ)程度のナノ粒子と呼ばれる粒子群を含む。1nm以下の粒子はクラスターと呼ばれ、もはや粉体と呼ぶことはほとんどない。英語では、PARTICULATE MATERIAL (粒子状物質)、POWDER (粉体)、BULK MATERIAL (粉粒体)、BULK SOLID (粉粒体)、BULK SOLID MATERIAL (粉粒体)などと呼ばれている。

■  粉体圧 ふんたいあつ

粉体層内で粉体同士または外部に対して生じる圧力である。単位は〔Pa〕。

重力場における圧力は、液体では深さと密度に比例して増加するが、粉体では貯槽壁面の摩擦によって上方に引き上げられる力が働く分だけ下方への圧力が低減する。直立した円筒型貯槽内への投入時および粉体層が静置しているときは、深さ方向の圧力は次第に一定値に近づくヤンセン式が適用されると考えられている。この考え方によれば、ある程度以上の深さでは圧力が増加しない。一方、排出時など、貯槽内を粉体が移動する時は圧力の変動が激しく静置時の数倍となることがある。貯槽の強度設計では、ヤンセン式に過大圧係数をかけた形で圧力の推定が行われる。静止時と移動時では大きく違うことに注意が必要である。

■  粉体技術 ふんたいぎじゅつ

粉体を扱う技術である。

粉体技術には、大きく分けて次の分野に関するものがある。?物性を測定し判定する、?新しい粉体を創製する、?粉体機械を製造する、?粉体プロセスを組み立てて製造・加工・ハンドリング設備を構築する、?粉体を製造・分離・加工する。日本粉体工業技術協会では、月刊誌「粉体技術」を発行し、2014年現在、19の分科会がそれぞれ活発な活動を展開している。現在では、コンピュータシミュレーションが盛んで、多くのモデルが提示されている。

■  粉体工学 ふんたいこうがく

広義の粉体を扱う学問で、機械、化学工学、化学、土木、物流などの多くの分野に関連する学際的な学問である。

日本では、これを扱う粉体工学会がある。部分的に扱っている学会としては、日本機械工学会があり、その中の部門として、機械材料・材料加工(粉体の製造)、流体工学(空気輸送)、産業・化学機械と安全(粉体機械)、交通・物流(輸送)などがある。ほかに、日本材料学会(粉体の製造、物性)、日本混相流学会(粉体輸送)などでも多くの論文が発表されており、これら以外の学会・研究会も数多い。日本語の粉体工学に対して、英語では一般にPowder technology が用いられている。

■  粉体層の気体透過  ふんたいそうのきたいとうか

 粉体層内部を気体が通過することである。

この時に通過する気体の速度とそ流れが生じる圧力損失との関係を利用して、粉体層間の経路の大きさを算出し、さらにその粉体層を構成している粒子群の平均粒子径を計算することができる。この方法によって得られる粒子径を透過径と呼ぶ。

■  粉体のバルクハンドリング ふんたいのばるくはんどりんぐ

粉体を、何かに充填・包装したのでない状態(バルクと呼ぶ)で取り扱うことをいう。

日本粉体工業技術協会内に設けられた貯槽供給輸送分科会が、その名称を1987年に「バルクハンドリング」分科会(2012年からは所掌範囲を広げて粉体ハンドリング分科会)と改称し、粉体技術用語として知られるようになった。ただし、バルクの用語は各分野で多様な用いられ方をしていて誤解を招きやすいことから、粉体分野以外の場では、説明が必要である。バルクハンドリング技術には、貯蔵(貯蔵自体だけでなく、貯槽への投入や排出に関する事項が含まれる)、供給・計量、輸送、包装開袋、粉体機器間のつなぎ、バルブ類などに関する技術が含まれる。技術課題としては、それらに関連する装置の設計以外に粉体取扱い上の問題が含まれる。ハンドリング上の問題としては、摩耗、偏析、閉塞、シール、粉立ち、フラッシング(噴流)、付着、凝集、固結、空隙率変化、帯電などがあり、対策が容易でないものが多い。

■  閉塞防止法−貯槽内の へいそくぼうしほう−ちょそうないの

貯槽内の粉体層が排出せずにとどまる閉塞の現象を防止する方法である。

閉塞防止には、?貯槽の形状を変える、?排出口径を大きくする、?貯槽内壁の材料を変えて壁摩擦特性を変化させる、?壁部分に振動などの力を加える、?貯槽内部の粉体を撹拌する、?粉体の特性を変化させる、?貯槽内での静置時間を短くする、などの対策がある。貯槽のスケールアップでは、粉体圧が増加することを考慮して十分に練る必要がある。また、貯蔵時間が長くなると粉体の充填状態(空隙率が下がる)、結合状態(水分や溶出分などが影響)が変化し、より強力な対策が必要となる。

■  粉粒体 ふんりゅうたい

広義の粉体、すなわち、塊や粒体を含め、大きさを問わない固体粒子の集まりである。 →粉体

粉だけでなくより大きい粒体(塊を含む)を含め、総称として粉体の代わりに登場した。しかし、粒体という用語がりゅうたいと呼ぶと流体と混同されるということや、粉体自体が一般社会での認知度が低いということもあり、粉粒体という用語が浸透しているとは言い難い。しかし、粒を含む幅広い体系の学問として位置付ける転機となったと言えよう。

■  偏析 へんせき

粉体同士が粉体層内で相対的に移動し、物性の違いによって偏在してしまうことである。

最もよく目にするのは、粒子径分布のある粉体を堆積させるときに、転がりによって代粒子が周辺に集まりやすい現象であろう。偏析を生じる物性は粒子径、密度、粒子形状が主であるが、付着凝集性、帯電特性、反発性も影響することがある。偏析させる運動には、滑り流れ、落下、振動、振動流動、流体流動、強制的な回転運動、飛翔、付着凝集、静電付着などがある。 粉体設備・装置の計画時に偏析が認識されることが少なく、全く予測されていなかったトラブルとして事後に対策を施す例が多く存在する。

■  摩耗 まもう

粉体が関わる摩耗には、粉体そのものの摩耗と粉体が引き起こす摩耗がある。

粉体の摩耗はアトリッションと呼ばれ、製品の劣化および微粉の発生による環境の悪化を引き起す。一方、粉体による接触部材の摩耗は、装置の損傷、摩耗物の製品中への混入、摩耗物による環境悪化などの問題を引き起す。それぞれ別項を参照。

■  摩耗−粉体による まもう−ふんたいによる

粉体が装置や配管に対して速度を持って接触することで生じさせる摩耗である。

粒子が相手の材料面に当たる角度と状況(下方から上の面に当てるときなど)によって摩耗量は異なる。材料の摩耗量は速度との関係で示されるのが一般的である。文献等の測定データによれば、摩耗量は速度の1〜3乗の広い範囲で示されている。原理から考えると、ある閾値以下の低い速度ではほとんどまたは全く摩耗しないと考えられるため、速度のべき乗で概括的に整理するこの方法はあくまで便法と言える。

■  摩耗−粒子の まもう−りゅうしの

粉体粒子が、ハンドリングされている間に摩耗することである。

日本語では適切な用語がなく、「粒子の摩耗」またはアトリションattritionと呼ばれる。粉化と呼ぶと粉砕に近いイメージになり、必ずしも適切ではない。粒子の摩耗には、表面が剥がれるように削られる表層摩耗型と、割れて小さくなる破砕摩耗型がある。粒子の摩耗は粒子同士または他の固体または流体と高速度で衝突させると発生する。その発生量は、相対速度の2〜3乗程度に比例するとされる。また、接触している状態で力が加わっても生じる。これを防ぐには、粒子の移動速度を低くすること、加わる力を低くすること、接触させないことなどが求められる。

■  摩耗と磨耗 まもうとまもう

材料に力が加わって摩り(磨り、擦り)減ることである。

日本機械学会の用語などでは摩耗に統一している。磨は主として意図的に磨く行為に対して用いられる文字で、例えば、研磨機で磨いて減らした量を示す場合には、磨耗量などという形で使われるが、極めて特殊なケースである。なお、次の言葉は使い方が固定している。摩擦、研磨。一般用語にみられるように、磨耗と書くのが間違いとまでは言いきれないので、寛容さが必要であろう。

■  見かけ密度 みかけみつど

粒子が内部を含む全体で同じ固体物質によって構成されているとみなした見かけ上の真密度である。単位は〔kg/L〕。

粒子の内部に閉じられた空間があるときは、その存在を無視して測定した値となり、その粒子を構成する固体物質の本来の真密度より小さい値となる。この差を解消するには、内部の空間が外部に露出するように、粒子を粉砕するなどして、内部の空間を露出させてから測定する必要がある。 見かけ密度は、古くはかさ密度の意味で使うこともあったが、現在では混同を避けるためにその意味として使用しない方がよい。

■  粒子径 りゅうしけい

単一粒子の大きさまたはそれに変わる代表値である。単位は〔m〕。

幾何学的な大きさとしては、3次元(または投影した2次元)のサイズを測定し、計算によって代表値を求める。3軸平均径、定方向径、等体積球相当径、定方向面積等分径、投影面積円相当径などがある。 超微粉の場合は、直接的に幾何学的な値を求めることが困難であるため、レーザ照射に対する回折現象などを計測することによって測定するが、係数を掛けて幾何学的な値に相当する測定値を示す。 また、幾何学的な値とは別に、液体中の沈降速度から求める沈降速度径、表面積から求める比表面積径、粉体層の透過圧力損失から求める空気透過径などがある。これらは、粉体を扱う目的に応じて測定し用いられるものであり、幾何学的な粒子径とは異なる値になる。すなわち、利用目的ごとに便宜上の数値を粒子径と呼んでいることになる。 

■  粒子径の分布  りゅうしけいのぶんぷ

現実の全ての粒子群がもつ粒子径の分布である。

その分布は頻度曲線または累積曲線(ふるい上、またはふるい下)で表すが、曲線の近似式としては、主に対数正規分布、またはロジンラムラー分布(統計学ではワイブル分布として知られている)の二つが用いられる。粉砕生成物等では後者が適用しやすいとされている。いずれにしても、現実の粉体の粒子径分布がそれらにぴったり合うということはなく、データ処理を簡便にするための近似的な分布である。

■  ルーツブロワ るーつぶろわ

ロータリー型ピストンを持つ容積式送風機で、粉体の低圧式空気輸送によく使用される空気源である。

ロータリー型ピストン2個の一部が常に小さなクリアランスを保って回転して高圧空気を生み出す。ピストンはオーバル形のものが多いが、2つでなく3つの突起部分をもった形状のものは三葉式ルーツブロワと呼ばれている。負荷(圧力)の変動に対して流量が変化しにくい特性を持っており、空気輸送では流れ状態の変化や外乱などによって生じる圧力損失のブレを流量を変えずに、ある程度自律的に調整する作用を発揮する。風量調整は流路にダンパーを差し込むのでなく、逃がし弁で減らすか、インバータを用いる。小規模な空気輸送では、リングブロワがよく用いられる。

■  レベル計 れべるけい

粉体の有無、あるいはその堆積高さを検知する計器である。

粉体の有無のみを検知するレベルスイッチと粉体の堆積高さを検知するレベルメータがある。後者のみをレベル計と呼ぶこともある。粉体と接触したときの負荷(応力)を感知する機械式、静電気を感知する静電容量式、反射波を感知する超音波式、錘を上下させて負荷を感知するサウンディング式などがある。 粉体の貯槽等では、上限、下限をレベルスイッチで管理することが多いが、内容量をある程度正確に知りたい場合は、レベルメータが用いられる。しかし、いずれの方法を用いるにしても、粉体が堆積する時には安息角を形成することが多く、貯槽等の中で次第に増える場合と次第に減る場合では、同じレベルであっても実際の量にはかなりの違いがある。精度の高い管理を行うには質量管理が要求されるが、ロードセルの低廉化により貯槽全体を計量して質量を把握することも多くなっている。

■  ロスインウェイト計量 ろすいんうぇいとけいりょう

粉体の貯槽部と排出部が一体となったものの質量を連続的に測定し、排出の流量または排出量を知ることで、定量供給または秤とり計量を行う方法である。

受け側容器の質量を測定するのに比べて、落差補正が小さくなり、高い精度で取り扱うことができる。しかし、連続定量供給の場合、貯槽部内の粉体量が少なくなったときに補充のための投入が必要であり、この期間には質量計測の連続性が失われるために、その質量の管理ができず精度が低下するという問題がある。秤とり計量ではこの問題は生じない。質量で管理できる連続供給方法としては、ロスインウェイト計量が多く、これ以外に利用できるものとしてはベルトスケールなど用途が限定される。

■  ロスインウェイト定量供給 ろすいんうぇいとていりょうきょうきゅう

排出(供給)装置と一体になった槽と内容物の質量を合わせて計測し、排出し続ける物質の減量速度を計算して、所定の流量が得られるようにフィードバック制御を行う定量供給法である。

粉体の供給・排出に対してよく利用される方法で、高精度で質量管理できるものとして知られている。供給先である受槽で増加する質量を基にして制御するのに比べ、落差分の影響が少なくなるなどにより、精度が高まる。この場合、集じんの方法によっては、吸引される量が計算量に含まれるため、誤差となる。これの影響を避けられない場合は投入計量方式の方がよいこともありうる。粉体の供給においては定量性が確実でないために、容積式でなく質量計量型の方法でないと信頼性が高くない。また、瞬時流量のばらつきが大きいことで落差補正にも限界があるが、この法式では、落差量を少なくすることで、精度を高めている。液体を供給する場合は各種の定量性の高いポンプによる定量供給が行われるのが普通であり、この方式はあまり用いられない。

■  ロータリーバルブ ろーたりーばるぶ

横置き円筒形で上下に開放ノズルを持つケーシングの中で、水平の軸の周りに数枚の放射状の羽根を持つロータを、僅かなクリアランスを持って回転させることによって、上下の空間をある程度シールしながら粉体を重力落下させる供給・排出機である。

ロータリーフィーダ、スターフィーダ、エアロックバルフ゛などとも呼ばれる。圧力差のある場で粉体を連続的に供給・排出できる希少な装置で、特に空気輸送関連の供給機、排出機として重用される。形式として、空気輸送の流れを乱さず、また高さを節約できる貫流(ブロースルー)型、分解洗浄を容易にしたサニタリー型、クリアランス部での挟み込みを防止する噛み込み型、100kPa程度までシールが可能な高圧シール型などがある。内外圧の差という意味では、2MPaの差圧に耐えるものもある。ロータリーバルブを実際に選定し使用する際には、次のような注意が必要である。?上部の貯槽等から定量的に切り出して供給を行う場合と、上部から落下してくる流れを乱さずにすべて流下させる場合があり、サイズを選定する際の能力の設定が異なる。?羽根には、ステンレスや鋼鉄の金属製とポリウレタン製があり、ポリウレタンの場合は、ケーシングとの間のクリアランスを予め持たせないスクレーパ型にすることがある。?温度変化に対しては、樹脂製では熱膨張係数が高いためにクリアランスの変化が大きく、要注意である。?クリアランスを0.2?程度以下にするのはコストの上でも不利であり、現場設置時に無理な力をかけると、ロータとケーシングがひずみによって接触し、かじるなどのトラブルを生じる恐れがある。?圧力差が高い場合、装置内を空気が通過する漏れが生じるが、これは圧力差の概ね2分の1乗に比例する。?回転数の低い範囲では、回転数と供給能力は比例するが、ある程度より高速では次第に増加率が低くなり、さらに高速になるとむしろ低下し始める。

■  ロードセル ろーどせる

導体に応力が加わって変形する(ひずみを生じる)と電導抵抗が変化して、そこに加わっている応力を逆算することができるひずみゲージを用いた荷重センサーである。

微小な抵抗の差で発生する電流差をとらえるために、ホイートストンブリッジ回路で増幅し、信号として取り出す。工業的な荷重の測定では、現在ほとんどこのロードセルが用いられている。一般工業レベルでは荷重の精度10000分の1程度以下の用途に用いられる。これを超える精度を必要とする場合は、天秤などのより精密な計量方式が用いられる。応力によって生じるひずみは極めて小さく、工業的には位置の変化はほとんどないと考えてよい。



(こなみ もりよし)
  *これは、小波技術士事務所のオリジナル解説です。個人のご利用を目的としています。


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